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上空からドローンなどのUAV(無人航空機、Unmanned Aerial Vehicle)で地形や建物のデータを取得して、3次元(3D)のコンピューターグラフィックスで再現する新手法をまとめた論文を大阪経済大学の中村健二教授と関西大学の田中成典教授、山本雄平助教、法政大学の今井龍一教授、摂南大学の塚田義典准教授、大阪電気通信大学の中原匡哉講師らの研究チームが発表した。ハードウェアとデータの調整方法などを見直すことで、施工現場の進捗状況や災害の状況をより正確に把握できるようになるという。この研究に関する論文はデジタル領域を中心に学術論文を広く掲載する電子ジャーナル「Journal of Digital Life」(ジャーナル・オブ・デジタル・ライフ)で公開されている。
長崎県は17日、県のほぼ全域を3D化したデータをウェブサイト「オープンナガサキ」で公開した。誰でも無料で、営利・非営利を問わず利用できる。
オープンナガサキでは、県の地図が格子状に区切られていて、利用者は見たいエリアの3Dデータをダウンロードできる。実際に、世界文化遺産の構成資産「旧グラバー住宅」が位置する長崎市南山手町周辺の3Dデータをダウンロードして、立体的に描かれた“地域の模型”をさまざまな角度から眺めると、内陸部から内海にかけてなだらかに傾斜していることがわかる。平面的な航空写真だけでは理解しにくい部分だろう。
こうした3Dデータを作成するカギとなるのがレーザスキャナーを搭載したUAVだ。上空から地表に向けてレーザを照射して、位置情報や色の情報を持つ「点」のデータを大量に取得。これを組み合わせることで実際の地形や町並みを再現した3次元点群データを作り出す。
自治体は3次元点群データを無償で公開することにより、官民で観光や防災・減災の施策を推進したいと考えている。同様に国も土木・建築の施工管理で活用することに前向きだという。そのため3次元点群データには正確性が求められるが、計測に誤差はつきものだ。中村氏らの研究チームは、2018年に発表した研究をもとに、従来の計測方法には3つの課題があったと指摘している。
課題の1つ目は、飛行速度が不安定なときは計測精度が下がる事だ。UAVは計測する範囲の上空を、絵筆でキャンバスをくまなく塗るように飛ぶ。加速、減速、一時停止を何度も繰り返す中で、加速中と減速中に計測したデータには誤差が多く含まれてしまうという。
2つ目は、米国のGPSに代表される衛星測位システム(GNSS)から得たデータをそのまま利用することで、標高方向にずれが生じてしまう事だとしている。
3つ目は、対象物までの距離が遠く、レーザの入射角度が適正ではないデータも含めることで点群データの生成精度が低下する事だという。例えば、異なる2つのルートで同じ対象物を計測すると、近い位置から計測したデータと遠い位置から計測したデータが混在する格好になってしまう。
この3つの課題を解消するために、研究チームはまずUAVに搭載するセンサーなどの構成を見直した。その結果、既存研究で問題となっていた機器間におけるわずかな時刻のズレや、標高方向の計測精度を改善できた。
UAVの飛行速度に関する課題については、UAVの飛行状態を判定して、GNSS受信機から高精度の移動データを抽出する方法で対処した。加速中、減速中に計測したデータは除外されて、同じ速度で直線的に飛んでいるときのデータのみが処理対象になるため、速度によって誤差が生じる事態を防げるというわけだ。
標高方向にズレが生じる課題については、平坦で周囲に上空を遮るものがない地点に「調整用基準点」を設けて、取得したデータと突き合わせることで正確性を高めた。
同じ対象物を複数のルートで計測したデータが存在する課題については、不正確だと思われるデータだけ取り除くことを試みた。具体的には、点群データ全体を一定の大きさのグリッドで分割して、グリッドごとに最も近い位置から計測したデータを抽出する方法を採用したという。
研究チームはこれらの手法を用いて、大阪府のドローン練習場で実証実験を行った。
秒速4メートルで飛行するUAVで、指定された範囲のデータを取得。10地点でそれぞれ100~200以上の「点」を計測して、最も正確だとされる既存のデータとの標高差を調べた。国土交通省の出来形管理要領を参考に、正確性をA~Dの4段階で評価したところ、新手法で得た「点」の8~9割がA評価(0.05m未満の差)とB評価(0.05m以上0.10m未満の差)だった。
また、計測した数値が機器の誤差の範囲に収まったことを受けて、研究チームは「提案手法により既存手法の3つの課題を解消できたことを確認した」と結論づけた。
中村氏によると、2020年ごろから取り組みを始めた静岡県を先例に、日本各地の自治体で3次元点群データのオープン化が進んでいる。これらの点群データには、航空機や回転翼機から照射するレーザで国土を網羅的に計測したLPデータ、写真・レーザ・GNSSなどを組み合わせて車両で道路空間を計測したMMS計測データ、UAVなどで比較的狭い範囲を高密度・高精度に計測したデータがあり、手法と成果が混在しているのが現状だという。
中村氏は「多くの計測手段が存在するなか、私たちの手法は比較的狭い範囲をLPデータよりも高密度に計測できます。レーザ測量であるため、UAV写真測量の機材と比較すると、夜間の計測や山間部の地表面の計測が可能であることなどが特徴です。これにより、オープン化されている点群データにおいて計測できていない箇所を補完することに活用できます。また、災害時には現場の3次元点群データを計測して、オープンデータと比較することで被災状況を把握できると考えられます」と述べた。
筆者:野間健利(産経デジタル)
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2023年9月15日産経デジタルiza【From Digital Life】を転載しています